聖学院大学提供│携帯小説「虹色プリズム」
虹色プリズム☆第31・32話 [第二章「銀幕の裏側で」]
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◆虹色プリズム
├第二章 銀幕の裏側で
└第31・32話
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「すみれ、そっちにいっちゃだめ。」
自分の叫ぶ声で目がさめた。
たしかに「すみれ」と叫んだ。あの少女はやはりすみれだったのだ。
それにしてもこのところ毎日同じ夢を見ている。もう逃れられないぞと誰かにいわれているようだ。
頭が痛くなるのは何かから逃げようという防衛反応だということはうすうす気がついていた。
何か堪えがたいことがあると記憶をなくすことがあるらしい。
記憶は嘘をつくということも聞いたことがある。
俺の中にある不吉な想像が頭をもたげた。
水車小屋の見える川に妹のすみれが流されて消えた。

でも、現にすみれは元気だし、夢の中で消えた少女がすみれとは考えられないとすぐに不吉な想像をかき消した。
実は僕とすみれには父がいない。
僕がまだ小さいころに貿易の仕事で外国に行き、そこで交通事故に遭い、死んだそうだ。
僕の記憶の中の父も外国の街角にスーツ姿で立っていて、こちらをやさしくみつめている。
僕が中学に入ってすぐ父親のことを作文に書くという宿題が出たことがあった。
それはちょうど年齢的にも母にものたりなさを感じ、
反抗的な態度をとったりしはじめた時期で、父という存在を意識しはじめていた頃でもあった。
+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・
「母の何か父の話題を遠ざけるような態度は僕が中学生になり、
父の存在を強く意識するようになってからますますひどくなっていた。
そのことは漠然と気がついていたが母が動揺する姿を見るとそれ以上、
話題にしてはいけない雰囲気を子どもながらに勘づいていた。
それはすみれも同様で兄弟の間でも父の話をすることはなかった。
だからその時の宿題も結局今まで聞かされていた話を適当に書いた。
父がなくなり、なぜか母は旧姓の七尾に戻った。僕らも七尾姓だ。
父方の姓は佐藤でもし父が生きていれば佐藤蒼也だったわけだ。
そこらへんの事情は子どもの僕にはよくわからないのだが、
父の祖父も祖母も元気で誕生日や入学の時にはプレゼントが送られてくる。
しかし、少なくても物心がついてからは一度も父のふるさとである長野県の安曇野に行ったことがない。
祖父母と会うのはいつもこちらでだし、そのたびに今度遊びにおいでといってくれはするが、
母が避けているのか未だにいったことはないのだ。
もちろん誰にも話してはいないことだが、
いつの頃からか父の生い立ちを調べてみたいと思うようになっていた。
まだ祖父母が元気なうちに安曇野にもいってみなければと思っている。
おっといけない、学校に行く時間だ。すみれが下で呼んでいる。
「おにいちゃん。学校遅れるよ。」
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