聖学院大学提供│携帯小説「虹色プリズム」
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虹色プリズム☆第51・52話
[第二章「銀幕の裏側で」] 投稿日時:2009/01/26(月) 08:00
◆虹色プリズム
├第二章 銀幕の裏側で
└第51・52話
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆
その時は「あんなこと?」と思ったが、すみれがおぼれたことだと勝手に思っていた。
その言葉の意味がいまわかった気がする。間違ってなければ、母には許せるはずはないが、さくらは俺の異母妹なのだ。
こんな重大な事実がわかったのに、冷静でいられる俺に自分でも正直驚いているが、なぜか素直に受け入れられるのだ。
いや、母から聞かされてきた理想的な父親ではなく暖かい血の通った人間的な父親がいたということがむしろうれしいという感じなのだ。他の人には理解できないかもしれないが、父を身近に感じられた。父がさくらを通じて真実を教えてくれていると感じた。
さくらとすみれはそんなことも知らぬまま双子の兄弟のように楽しそうに映画の話をしている。
その姿を見ていて、ひらめいた!
「ねえ、さくらさんもこの映画に出てくれない?もちろんすみれも出るんだけどふたりがいるととてもおもしろいストーリーになるんだ。」
さくらは驚いたようであったがすぐに
「やります。私映画に興味があるんです」
「さくら、大丈夫、そんな安受け合い。合唱コンクールはどうするの」
練習のついでにちょっと見学のつもりで一緒に来ていた友だちが心配して声をかけた。
「もちろん合唱コンクールもがんばるよ。大丈夫ですよね、蒼也さん」
いきなり蒼也さんと呼ばれてちょっとむずかゆい思いでいると、すかさず萌が不満そうに
「蒼也さんって、なれなれしいわよ、七尾さんと呼びなさい。私たちだって七尾さんなんだからあ」
確かにそうだ、萌や翠に蒼也さんと呼ばれたら変だ。するとひかりが口をはさんだ。
「蒼也くん、水車小屋のストーリーがつながったのね。」
「ひかり先輩まで蒼也くんですか」
萌が口を尖らせた。
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ひかりはそれには応えない。
「パズルの最後のピースがうまくはまりそうね」
ひかりも興奮気味だ。
俺が見た水車小屋の夢というかまぼろしの話を面白いからとシナリオに入れるようにいったのはひかりだったのだが、何度ミーティングをしてもうまいストーリーにならなかったから気にしていたのだ。深雪先輩まで巻き込んで夏休みには受験勉強の合間にヨネダコーヒーでやったのに、うまくまとまっていなかった。
それこそすみれが演じるヒロインは「まぼろしの少女」になりかけていたのだが、ふたりいたんだ!これではっきり見えた。
少し撮り直しの部分は出てくるが、肝心の部分はこれからなので、二人にしても大丈夫だ。

ヒントをあたえてくれたおばの子ども、おれの姪の桃花と甥のあきらもせっかくだから回想シーンで使ってあげよう。この前遊びに来たときにビデオカメラをまわしておいたのだ。
14歳の少女がふたり。すみれとさくら、3月生まれのすみれ、4月うまれのさくら。家に戻って仕上げればそのふたりの学園青春映画のシナリオはほぼ完成だ。
川べりでの撮影は順調に終えることができた。シナリオ変更によるとり直しという技術的なことは深雪先輩に相談すればいい。
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虹色プリズム☆第49・50話
[第二章「銀幕の裏側で」] 投稿日時:2009/01/19(月) 08:00
◆虹色プリズム
├第二章 銀幕の裏側で
└第49・50話
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆
「すみれちゃんね!会いたかったわ」
翠は嬉しそうに微笑んだ。
「久しぶりね、すみれちゃん」
ひかりも声を掛けている。
「・・・本当に、そっくりですね」
萌は、昨日の少女、さくらと比較しているようだった。
「そういえば、どうしてわざわざ下で待ち合わせにしたの?橋の上でも良かったんじゃない?」
しばらく話しているうち、ひかりが唐突に萌に聞いた。
ひかりも以前さくらに会ったことがあるらしく、もう一度会うために来たらしい。
「そうなんですけどぉ、さくらさんが、一秒でも長く合唱の練習したいって言うので、ここにしたんですぅ」
・・・別に橋の上で待ち合わせしてもそんなに時間は変わらないと思うが。というか、なぜわざわざ川べりに下りて練習するのだろう。
極論を言ってしまえば、歌の練習ぐらい放課後の学校でも、カラオケボックスでもできそうなものだ。
「あ、来ましたよ!」
翠の声に、全員が上を見ると、確かに風見さくらともうひとり、女の子が下りてくるところだった。
下りきるとさくらは深々と頭を下げ、昨日はありがとうございました、と言う。
そして萌に、紙袋に入れられた上履き(たぶん)と、それとは別に小さな袋を渡した。
おそらく、お礼のお菓子か何かだろう。
隣の少女がすみれに気づいた。
「ねえ、あなた・・・さくらそっくりね!」
その瞬間、意外なことが起きた。
すみれの性格からして、きっとこういうとき、「わぁ、本当!鏡みたい!」と叫んだりして、こう・・・騒ぐと思っていたのだが、すみれはまるで昨日のさくらのように、硬い表情のままだった。
「本当。・・・そっくり」
静かにそういうと、ぎこちなく笑い、さくらに握手を求めた。
なんだか違和感がした。
もしかして、二人は既に会ったことがあるんじゃないか・・・。
だがこのときはまだ、自分の中に沸いた、そんな馬鹿げた想像にさえ、まだ気づいていなかった。
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さくらさんに単刀直入に聞いてみた。
「小さい頃、川に落ちたことない?」

「どうして知っているですか?おぼれかけたんです。覚えてないんですが…。」
やはりさくらが川に落ちたらしい。まぼろしをたどるとその時誰かが助けようとして亡くなっているはずなのだが、いやなことを思い出させるのはかわいそうなので、それ以上聞かなかった。
聞いたとしてもたぶんその話は聞かされていないだろう。誰でも幼稚園以前の記憶はほとんど覚えていないし、覚えていても断片的なものだ。
するとさくらの方から話しだした。
「ほんとに危なかったらしいのですが、近くにいた大学生が助けてくれたそうです。その命の恩人とは今でも時々手紙をやり取りしてますよ。助けてもらったのに食事をごちそうになったりして」
あれ!?俺の想像していたことと全然違う。助けたのは俺のおやじで、助けた後におぼれて死んだ、それを隠すために外国で交通事故死したと幼かった俺たちは信じ込まされている。そう、思い始めていたところだったのだ。
記憶は嘘をつくといわれているらしい。そう思いたいように記憶を作り上げる。父の死とまぼろしの少女をどこかで勝手に結びつけていたのだろう。
この前おばさんが来たとき気になることをいっていた。母に話しているところを偶然聞いてしまったのだ。
「蒼也君、兄さんにそっくりになってきたわね。映画が好きなんだって。兄さんも映画つくっていたわよね。それでは食べられなくて商社マンになったんだけどね。そこでおねえさんに出会って七尾家の養子におさまって、私たちは安心したんだけどね。あんなことがあって、さらに事故でしょ。時々、お兄さんはやっぱり映画を作っていた方が幸せだったのかなって思うこともあるのよ」
普段からずけずけというおばさんなのだが、いやみはないので母とも仲良くやっているのだ。
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虹色プリズム☆第47・48話
[第二章「銀幕の裏側で」] 投稿日時:2009/01/12(月) 08:00
◆虹色プリズム
├第二章 銀幕の裏側で
└第47・48話
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私は映像に釘付けになっていた。
私がいないときに萌ちゃんが撮っていたというものだ。
先日会ったすみれちゃんにそっくりな少女だ・・・
蒼也の驚いた顔。
少女の戸惑い。
そして川に落ちそうになる彼女を間一髪で捕らえた手。
「どうです?」
萌がニヤニヤしながら言う。
「良く撮れているわ・・・」
生返事しながら少女の顔から目を離せずにいる。
似ているが、硬い表情のせいかすみれとは別人にも見える。
似ているからこそ違いが際立つというか・・・
でもかすかな違和感。
なんだろう、これは・・・?
「彼女、風見さくらさんって言って北緑中学合唱部なんですって。靴が流されちゃって、私が上履きを貸してあげたんですよ。
今日返してもらうんで会うことになってるんです」
萌は得意気にしゃべり続けていた。
夢の中の少女を思い浮かべながら、俺は歩いていた。
夢の中で川に落ちた女の子を、俺はすみれだと思って疑わなかったが・・・
本当にそうだったのか?
・・・本当にも何も、夢は夢だ。
だいたい俺は、さくらさんとは初対面じゃないか。
会ったこともないのに夢に出てくるわけが・・・
川べりに立つ人影を見つけて、俺の思考は中断された。
・・・わからない?
表情がしっかり見える位置にいるのに、俺はその子がさくらさんだと断じることができなかった。
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・・・どっちだろう。
考えながら、ふと洋服を見て、さくらさんじゃない、すみれだと確信した。
先週すみれが嬉しそうに紙袋から出した、新しいワンピースを着ているから、間違いない。
「すみれ!」
川べりに下り、それでも内心さくらさんじゃないかと少しドキドキしながら声を掛けると、振り返ったすみれはニコッと笑って、「お兄ちゃん。もう来たの?」と言った。
「ああ。撮影には早すぎるんだけど、ちょっとね・・・」
すみれには、映研のことや撮影場所なども話題の一つとして話している。
「すみれは、どうしてこんなところにいるんだよ?」
橋の上ならまだしも、どうして川原に下りているのかは不思議なところである。
「うーん、どうしてお兄ちゃんがこんな川原を選んだのかな、って思って見に来たの」
そう言ってふふっと笑う。
「別に俺が独断で選んだわけじゃないよ。先輩とか、他のメンバーの意見もあってここにしたんだから」
そっかぁ、とすみれは呟いた。
「あれー?どうして七尾先輩がここにいるんですかぁ?」
大きな声がして振り返ると、萌とひかり、そして翠が川べりに下りつつあるところだった。
「まだ早いですよぉ。撮影は1時間あとからですぅ」
そう。今日は深雪も来ることになっているので、それに合わせて少し遅めに始めることになっているのだ。
「風見さんともう一度しっかり話したいと思って、来てみたんだ」
俺が答えると、翠が少し首をかしげながら、「そちらは、妹さん?」と聞いてきた。さくらではなく?という意味だろう。
「ああ。俺の妹で、すみれっていうんだ」

言い終わらないうちにすみれは一歩前へ出て、ぺこりと会釈した。
「七尾すみれです。兄がいつもお世話になっています」
にっこり笑ってそう言う姿は、なんだか母さんに似ていた。
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虹色プリズム☆第45・46話
[第二章「銀幕の裏側で」] 投稿日時:2008/12/22(月) 08:00
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◆虹色プリズム
├第二章 銀幕の裏側で
└第45・46話
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北緑中学合唱部の女の子は「風見 さくら」というらしい。映画の話に乗ってきたが、
その聞く時のしぐさもすみれにそっくりだ。
遠くから見て兄弟である俺が間違ったのだからよく似ている。顔立ちも持っている雰囲気もそっくりだ。
といっても双子というほどではもちろんない。
中学生くらいの女の子は急に変わるので毎日顔を会わせている家族でなければ、
確かにすみれと間違えるのは無理はない。
違うとするとすみれが花だとするとさくらはその影のような感じがするところだ。
それにしても、こんな近くの町に同じ年齢の子がいるなんて不思議な話だと考えているとき、ふとある考えが浮かんだ。
「父が生きているのではないか。」
そう考えれば説明がつく気がした。
しかし、残念ながら父の死は間違いのない事実だし、さくらさんがすみれと同じ歳ということは不可能だ。
そうなるとかんがえられることは、父が生きているときに母以外の女性との間に子供がいたということだ。
もちろん、それはさくらさんが俺の異母兄弟だとしての話になるなので、ひかりに話せばきっと大笑いするに違いない。
そんな馬鹿げた妄想はすぐに頭から消えた。
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とにかく、すみれによく似た少女の出現は俺にとって衝撃であった。
静かに確実の俺の中に波紋を広げつつある。
このことは今一つ見えていなかった映画のシナリオには大きなヒントになった。
このことは電話して急いでひかりに話したかったが、ぐっとこらえた。
完璧なものにしてから話すことにした。
しかしジグソーパズルの重要なピースが見つかったのは確かだった。
それにしても川の中に入るすみれのイメージを俺に見せるというのはなんなんだ。
山荘の時は先輩のたくらみというか浅はかな人間の考えたことであったのだが、今回は明らかに違う。
見えざる何かが、何か起こそうとしている。
「運命」ということばが浮かんだ。ヒントをもらったのは確かだが、これを料理し作品にしていくのは俺だ。
ということは料理の次第によってはくだらないものにもなってしまう。
目に見えない者からのプレゼントであると同時に挑戦でもあるのだ。
水車小屋でこっちにおいでよと誘う少女のことがストーリーとして見えてきたのだ。
俺は次第に死んだ父親のことを意識し始めていた。そしてその死の真相にも迫る決意を固めつつある。
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虹色プリズム☆第43・44話
[第二章「銀幕の裏側で」] 投稿日時:2008/12/15(月) 09:00
◆虹色プリズム
├第二章 銀幕の裏側で
└第43・44話
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「風見・・・って?すみれじゃないのか?」
七尾くんは当然、困惑していた。
あたりまえだと私だって思う。あの日の帰り道、ひかりさんの携帯電話に入っていた写真を見せてもらったけれど、
まさしくこの、風見と名乗る女の子とそっくりだもの。
「七尾くん。あのね、私とひかりさん、最後のミーティングの帰りに、この・・・風見さん?に一度出会っているの。ね?」
風見さんはコクリと頷く。
「ひかりさんも、すみれちゃんと間違えて声を掛けたんだけれど・・・。他人の空似ってあるのね」
風見さんはまだ青ざめた顔のまま、少しぼうっとした感じだ。
一方の七尾くんは、目を丸くしたまましげしげと風見さんを眺めている。
「あのぉ。すみれって誰なんですかぁ?」
ビデオを回したまま近づいてきた萌ちゃんが、間の抜けた声で質問をした。
とりあえず風見さんには濡れてしまった靴下をぬいでもらい、撮影セットにいつも入っているハンドタオルで水分を拭き取りつつくるんだ。ぬいだ靴下は自転車のかごの中で多少でもと乾かしている。
「靴が片方ないとなると・・・。家は遠いんですか?確か隣町って言っていましたよね?」
私が少し落ち着いた風見さんに尋ねると、少し困ったような顔で風見さんは頷いた。
「電車で1駅なんですけど、駅からが結構あるんです」
ここから駅までも、裸足で歩くには結構あるし・・・。
「あ、じゃあ、私の上履き使っていいですよぉ」
萌ちゃんがにこやかに提案した。

「上履き?」
七尾くんが聞き返す。
「はい。さっき見たら、風見さんの足のサイズ、22でした。私と同じなんですよぉ。自転車ありますし、ここからなら5分くらいで行って帰ってこれます」
にこぉ、っと笑いながら説明する萌ちゃんは、なんだか嬉しそうだ。
「でも、そうしたら明日の学校はどうするの?」
「大丈夫ですよぉ。もう、ストックが買ってあるんですぅ」
やはりなんだか嬉しそうだ。
「靴下だけで帰るよりは、上履きでも履かないよりはいいでしょ?」
にこっと萌ちゃんが風見さんに聞くと、風見さんは申し訳なさそうに「でも、そんな上履きまで貸していただいては・・・」と、蚊の鳴くような声で呟いた。
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失礼ではあるけれど、大空に溶け込むようにあの曲を歌い上げていた人物とはとてもじゃないけれど思えない。
「そうなんだ。あの時の友達と待ち合わせをしていたのね」
萌ちゃんが上履きを取りに行っている間、私と七尾くんは風見さんと雑談をしていた。
「ええ。来月の合唱コンクールに向けて、練習をみてもらっていたんです。あの・・・私だけが、下手
だから・・・」
なんだか、訥々(とつとつ)と話す子だな、と私は思っていた。あんなにのびやかに、上手に歌っていたのに・・・。
「もしかして、北緑中学?合唱部が有名な」
風見さんは少し驚いたように七尾くんの方を見て、「そうです」と小さくうなずいた。
しばらく七尾くんと風見さんの話がはずみ、私はあまり話に入って行けなかった。少し生き生きと話す風見さんと七尾くんは、本当に兄妹のように見える。
萌ちゃんが出発してからゆうに10分は経った頃、風見さんが急に気がついたように「そういえば、皆さんは何をしていたんですか?カメラとかいろいろ持って・・・」と聞いてきた。
「私たちは映画研究部なの。映画を自主制作して、コンクールに出品するのよ」
きらりと、輝く瞳を私に向ける。
「映画?映画って、特別な機械がなくても作れるんですか?」
うーん、と七尾くんが唸る。
「学校にそういう機械がある場合もあるだろうけど、うちの高校の場合は、ちょっといいパソコンとソフトを使うくらいだよ。あとは綺麗にとれるビデオカメラがあれば作れるんだよ」
風見さんはさらに瞳を輝かせていた。
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