聖学院大学提供│携帯小説「虹色プリズム」 2008/10
虹色プリズム☆第29・30話
[第二章「銀幕の裏側で」] 投稿日時:2008/10/27(月) 00:00
★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆虹色プリズム
├第二章 銀幕の裏側で
└第29・30話
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆
もしもし。お兄ちゃん?ミーティング終わった?」
じゃあ、今日はここまで、となったとき、
ジャストタイミングで掛かってきた電話は、すみれからだった。
「ああ。ちょうど今終わったよ」
俺が答えると、すみれは少し早口になった。
「ねえ。今日、急いで帰ってきてね。今すごく大変なの」
「大変?」
俺は当然聞き返す。一体何が大変だと言うのだろう。
「そうなの。じゃあ、よろしくね」
プツッと電話は切れた。何があったかは分からないが、どうやら帰りにコンビニに寄る暇はなさそうだった。
「すみません。お先に失礼します」
そう言って俺は急いで部室を後にした。
ガチャリと扉を開けると、リビングで楽しそうな声が聞こえた。
「ただいま」といいかけた瞬間、リビングから「危ないっ」とすみれの叫び声が聞こえてきた。
どうしたんだ?
リビングに入ると、ローテーブルにつかまり立ちをしている赤ちゃんと、そのそばでローテーブルの角に手を添えているすみれの姿があった。
「・・・誰?」
間の抜けた問いをする俺に、すみれはようやく顔を上げた。
「あ、お兄ちゃん。お帰り」
すみれは一瞬こっちを見ただけで、視線をすぐに赤ちゃんに戻す。
「誰の赤ちゃん?」
近寄ってしゃがみ、赤ちゃんの顔を見ながらもう一度聞くと、すみれは今度は意外そうな顔でこちらを見た。
「何言ってんの?桃ちゃんの子どもよ。あきらちゃん」
ああ、桃花の・・・そういえば一度だけ来たことがあったな。あの時から随分大きくなったように感じる。
桃花とは、母さんの兄の娘で、俺達から見れば従兄弟ということになる。
母方の従兄弟の中では一番年長者で、10ヶ月ほど前に女の子を出産した。
出産後しばらくしてから一度遊びに来たきりだったけれど・・・。
「・・・人間っぽい・・・」
俺があきらを見てそう呟くと、すみれは大笑いした。
「当たり前じゃない。人間だもん」
それでもテーブルの角に当てた手は離さない。
「いや、前に見たときはこう・・・ETみたいだったじゃん?」
俺が慌てて言うと、すみれは更に笑った。
「桃ちゃんもそう言ってたね」
+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・
それまで立っていたあきらが座り込み、ハイハイしだしたので、
すみれはようやく角から手を離し、あきらを目で追っている。
「ところで、どうしてあきらがここにいるんだ?桃花も母さんもいないし」
あきらは床に転がっているボールのところで再び座り、左手でボールを拾い、
右手に持ち替え、それを繰り返しながら何やら考えているようだった。
まだ1歳にもなっていないのに、じっくりとボールを見つめている真剣なまなざしが何だか面白い。
「桃ちゃん、歯医者に行きたいって言って、あきらちゃんを預けに来たのよ。そうしたらオムツを忘れたから、お母さんが今買いに行ってるの」
・・・別に母さんが買いに行かなくても、すみれが買いに行けばいいんじゃないか?母さんの方が赤ちゃんの扱いは慣れているだろうし・・・。どうせすみれが、あきらと遊びたいと言ったんだろうけど。
「そういえばさっきは何で叫んでたんだ?別にあきらが怪我した訳じゃないだろ?」
一瞬不思議そうな顔をした後、ああ、とすみれは小さく呟いた。
「別に危ないことは無かったんだけど、テーブルの角を見た瞬間、あきらちゃんが目を角にぶつけるのが浮かんじゃって、怖くて思わず叫んだだけよ」
そういって苦笑いした。
「で、お兄ちゃんも一緒にあきらちゃんをみてね。まずは手洗いうがい!」
やれやれと俺は心の中でため息をついた。急いで帰って来い、というのは、単に人手確保の為だったのか。
けれど・・・。
思い浮かんだのはあの夢だった。
すみれが川に・・・。あの夢は・・・。
同じように、危険回避のためにイメージしたものだったのか?
・・・だが、実際に川に流されたイメージではなかった。
やはり、単なる悪い夢だったのだろうか。
外は残暑と言うよりも、夏真っ只中の暑さだったが、室内はクーラーが効いている。
廊下に出ると少し湿気を含んだ暖かい空気が充満していて少し気分的にぐったりしたが、洗面所に向かった。
ミーティングの最後に、新学期からも、3年生は時々は顔を出すと言っていた。
気は抜けない。先輩たちが感動してくれるような作品を作らなくては。
+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・
☆お知らせ☆
掲示板『虹色プリズム』を開設しました♪
聖学院大学が提供する携帯小説「虹色プリズム」をいつもご覧頂き、ありがとうございます!
読者の皆様の感想や応援メッセージを募集しています。ぜひ投稿ください♪
>>掲示板の利用はコチラから
虹色プリズム☆第27・28話
[第二章「銀幕の裏側で」] 投稿日時:2008/10/20(月) 00:00
★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆虹色プリズム
├第二章 銀幕の裏側で
└第27・28話
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆
「気持ちいい!草の香りも、久々な気がする~!」
川原の草原の端に座った途端、私は思わずそう叫んで背伸びをした。
そんな私を見て、翠は心底面白そうに笑う。
「何言ってるんですか。ついこの間、木と草に囲まれた山荘で合宿したじゃないですか」
しばらく、私と翠は映画談議や新学期と共に始まる実力テストのことを喋った。
途中お茶を飲んだり、私のかばんにいつも入っているクッキーなどを食べつつも、延々止まりそうもなかった。
コンクールに向けたシナリオ作りと、模試のスケジュール、入試。
そのことだけで埋め尽くされていた私の日常で、ほっとひと息つけるひと時だった。
大空を 自由に鳥たちが 光の中 飛びかうように
そんな私たちの耳に、聞き覚えのある歌詞とメロディが流れてきた。
思わず辺りを見回す。声の主は・・・?
夜空から こぼれた星屑が 波の上を滑るだろう
・・・私たちより数十メートル離れた場所。橋の真下辺りに2人の女の子がいて、その子達が歌っているようだった。
「・・・あれ?すみれちゃんかも」
私が思わずそう呟くと、「すみれちゃん?」と翠が不思議そうな声で聞き返した。
「ほら、七尾君の妹さんよ。合宿中、電話が掛かってきたでしょう?」
ああ、と小さく頷くと、翠も目を凝らして、女の子の顔を確かめようとする。
tomorrow tomorrow・・・
そこで歌は途切れた。すみれちゃんらしき子が、首を傾げて手元の白い紙に視線を落としている。
私たちは声を掛けてみることにした。
+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・
「すみれちゃん!久しぶりね」
私がそう声を掛けると、すみれちゃんは振り返り、怪訝な表情をこちらに向けた。
「あの・・・どなたですか?」
硬い表情のまま、女の子は私にそう聞いた。
だがその顔はどう見てもすみれちゃんである。
強いて言うなら、いつもはヘアバンドをしているのに、今日はヘアピンで髪を留めているところだけが違う。
「七尾すみれ・・・さんではありませんか?」
驚きに妙な言葉遣いになってしまった。他人の空似?まさか。
女の子は用心深いまなざしのまま、小さく首を振った。
「私たち、隣の町から来たんです。練習できるところがあまりないから・・・」
もう1人の女の子が笑顔でそう言ってくれた。
「・・・ごめんなさい。人違いだったみたい」
恥ずかしながらそう言うと、すみれちゃんに似た子も少し笑って、「気にしないでください」と言ってくれた。
もう一度謝ってから、私たちは帰ることにした。
橋から家までは、当然すみれちゃんのソックリさんについての話である。
「本当にそっくりなのよ!目が大きいところとか、髪型も、みんなそっくり!」
熱く語る私に、翠は困ったように頷いた。
「人間って、この世に3人、そっくりな人がいるらしいですから、そうかもしれませんよ」
本当にそうなら、すみれちゃんに教えてあげたい気がする。何だかドキドキ、わくわくすることだもの。
「ドッペルゲンガーかもしれませんけどね」
翠がニヤッと笑った。
「ドッペルゲンガーだと、本人と会っちゃいけないのよね」
確かそうです、と翠は頷く。
「でも隣町なら、うっかり会っちゃいそうよね」
思わずため息をつく。名前くらい聞いておけばよかった。せめて中学校名とか。
「また会えますよ。すみれちゃんより早く、私たちが会えばいいんです」
翠の口調はどことなく頼りになる。なぜかは分からないけれど。
翠は、人を安心させるタイプの人間らしい。
湿気を含んだ生温い風が頬をなでていった。
+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・
☆お知らせ☆
掲示板『虹色プリズム』を開設しました♪
聖学院大学が提供する携帯小説「虹色プリズム」をいつもご覧頂き、ありがとうございます!
読者の皆様の感想や応援メッセージを募集しています。ぜひ投稿ください♪
>>掲示板の利用はコチラから
虹色プリズム☆第25・26話
[第二章「銀幕の裏側で」] 投稿日時:2008/10/13(月) 00:00
★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆虹色プリズム
├第二章 銀幕の裏側で
└第25・26話
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆
でも、2時前にミーティングが終わるなんて、本当に珍しいことだった。
きっと本当の原因は黒木の勉強の都合だろうけれど・・・。
新学期が始まるってことは、夏休み明けの実力テストが迫っているということだ。
今日が夏休み最後のミーティングだったけれど、
七尾はミーティング終了直後、電話が掛かってきて、そそくさと帰ってしまった。
室内にいるのは、家族で出かける用事があり、家の人が迎えに来ると言ってゆったり雑誌を捲っている萌と、私と同じく帰り支度をしてる翠。
つまり、映研の女子メンバーしかいない。翠とはこの後一緒に帰る予定だ。
「じゃあね、萌ちゃん」
翠が声を掛けると、萌は雑誌から顔を上げ、座ったまま軽く会釈した。
「さようなら。また新学期に」
ひらひらと手を振って、萌はにこっと笑う。萌って何気に大物な気がする。心の中で苦笑した。
私も翠も、そして萌も、家の方向は同じだ。家まではゆっくり歩いても15分くらい。
翠や萌も、そんなに距離は変わらない。
「シナリオ、完成しそうですね」
翠が安心したように微笑む。
「そうね。でも、これからが大変よ。ロケ地もまだ決定していないんだから。3年生はもうあまり顔を出せなくなるし・・・」
それに先生は頼りにならないし、と小さく付け足すと、翠も苦笑した。
「・・・新学期からは、どのくらい顔出せるか分からないけど、七尾君にあまり厳しいことは言わないであげてね」
私がそう言うと、翠は意外そうな表情を見せた。
「でも、七尾くんが先頭きって動いてくれないと、どうにもなりませんよ」
そう。確かにこの夏休み、ああだこうだと七尾を急かしたりしてミーティングを進めたのは、私である(黒木君は全くアテにならない)。
だが深雪に、才能があるということと、適性があるということは少し違う、と言われた。
・・・慎重さも必要なのだ。
+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・
深雪さんは、七尾を「育てたい」と考えているのだろう。
「まぁ、部活だしね。学業優先しなくちゃ。家族や先生に睨まれたらオシマイだもん」
そう言って笑ったら、翠は納得したらしい。
「七尾くんだけに押し付けてもいけませんしね。私も頑張ります」
そう。この夏休みのミーティングは、殆どがシナリオの練り直しだったのだが、
実際には3年生と七尾が中心で、他のメンバーは話に加わるのが精一杯というところだった。
逆に、他のメンバーの学ぶ機会を奪ってしまったかもしれない。
そう思うと心が痛かった。
「今日は風があるから、あまり暑さを感じませんね」
ふっと考えこんでしまった私の耳に、明るい翠の言葉。確かに、湿気を含んではいるが、風が気持ちいい。
「そうね。ねぇ、ちょっと川原に下りておしゃべりしない?」
ちょうど橋の真ん中を通っていたときなので、私はそう言ってみた。
柵の途中にいくつか扉があり、橋に一番近い扉の鍵は開いている。
扉から川原へは、粗末ながら階段もあるから、安全に降りることができるのだ。
今ごろだと野球をする少年たちがいるが、今日はいないみたいだし。
+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・
☆お知らせ☆
掲示板『虹色プリズム』を開設しました♪
聖学院大学が提供する携帯小説「虹色プリズム」をいつもご覧頂き、ありがとうございます!
読者の皆様の感想や応援メッセージを募集しています。ぜひ投稿ください♪
>>掲示板の利用はコチラから
虹色プリズム☆第23・24話
[第二章「銀幕の裏側で」] 投稿日時:2008/10/06(月) 00:00
★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆虹色プリズム
├第二章 銀幕の裏側で
└第23・24話
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★☆
シャッ!
勢い良くカーテンが開けられる。
朝の柔らか・・・ではない強い陽射しが、閉じた目の上から強く突き刺す。
「お兄ちゃん!朝だよ!」
「・・・まだ眠いでござるよ・・・あと5分・・・」
「今日がミーティングの最終日なんでしょ!?遅刻していいの?」
「ミー・・・?」
そうだった。
昨日必死で書き上げたシナリオ、ちゃんと提出しないと月森さんに怒られる・・・。
俺は跳ね起きた。というのは大げさで、少し勢いをつけて上体を起こした。
「ラーメンだから、早く来てね」
・・・夏なのに。そして朝食にラーメンって、そろそろやめて欲しい。
可愛らしいカップ麺なんかじゃなく、普通にラーメンどんぶりにたっぷりと作ってくれるのだ。
・・・再び折れそうになる心を奮い立たせ、俺はようやく立ち上がり、背伸びをした。
「お兄ちゃん、もうすぐ実力テストでしょ?部活ばっかりやってて大丈夫?」
すみれはラーメンをどんぶりによそいながら痛いところを突いてきた。

「一応勉強もしているし、英語と数学以外は大丈夫」
適当に誤魔化そうと試みる。
「・・・英語と数学こそ大切なんじゃないの?」
やっぱりすみれってしっかりしているな、と思った。
誰に似たんだろう・・・。
熱々のラーメンを食べ終え、学校へ向かう。
今日が終わったら、基本的には3年生は部活から引退する。
月森さんとも、顔を合わせる回数が減ってしまう。
そう思うと言い表しようのない気持ちになる。
もちろん部活へは、映画を作るため、映画について学ぶ為に行っているのだが、
そこに紛れ込んでいる小さな楽しみのひとつが月森ひかりであることは、
認めざるを得ない事実のひとつだった。
+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・
夏休みも、終わりが目前に迫っている。
毎年、夏休みの終わりは、小さな心残りと言うか、寂しさと言うか・・・そんな感覚がある。
もっと勉強できたんじゃないか。もっと楽しめたんじゃないか。
もっと・・・きらきらした夏休みにできたんじゃないかって。
きらきらした、というのは、小さい頃から思っていた「夏」のイメージだ。
時間と言う目に見えないものが、夏休みの間は、きらきらと光り輝いて流れる気がしていた。
何となく、だけど。
でも今年は、心残りなことは何も無かった。
小学校1年のときから考えれば12年目。
12年目にしてやっと私は、充実した夏休みを送れた訳だ。
受験が迫っているのに何を考えているんだと、
割と教育熱心な両親は合宿参加を反対したが(父は、先生が同伴しないというのも気に掛かったようだ)、
それを押し切って参加してよかった。
両親はうるさかったが、ミーティングも、8割は参加できたし。
『絶対後悔するわよ』
母が言った言葉は結構長い間胸につっかえていたけれど、今はスッキリしている。
映研のこと以上に、勉強もしたからだ。
希望しているF大学については、A判定が出ている。油断はできないけれど。
・・・もし参加していなかったら、逆の意味で後悔するところだった。きっと。
ふふっと、思わずひとりで笑ってしまった私を、翠が見逃すはずはなかった。
「ひかり先輩っ!ミーティングが早く終わったのが、そんなに嬉しいんですか?」
イスの上に置かれたカバンに、ノートとペンケースをしまっていた私の顔を覗き込むようにして、
翠が面白そうな笑顔を向ける。
「え・・・?違う違う、ちょっと考え事してたらつい笑っちゃっただけよ」
そう言いつつ、私は慌てて手を横に振った。
本当に笑ってしまってたみたい。恥ずかしいなぁ。
+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・+・
☆お知らせ☆
掲示板『虹色プリズム』を開設しました♪
聖学院大学が提供する携帯小説「虹色プリズム」をいつもご覧頂き、ありがとうございます!
読者の皆様の感想や応援メッセージを募集しています。ぜひ投稿ください♪
>>掲示板の利用はコチラから
ブログ最新記事
このページへのアクセス数
Total:68264PV
| 今日 | : | 5 |
|
| 1日前 | : | 40 |
|
| 2日前 | : | 28 |
|
| 3日前 | : | 56 |
|
| 4日前 | : | 40 |
|
| 5日前 | : | 34 |
|
| 6日前 | : | 158 |
|
| 7日前 | : | 30 |
|
| 8日前 | : | 26 |
|
| 9日前 | : | 16 |
|
ログイン










