聖学院大学提供│携帯小説「虹色プリズム」 2008/7
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虹色プリズム☆第6話
[第一章「蒼夏の頃」] Posted Date:2008/07/31(Thu) 00:00
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◆虹色プリズム
├第一章 蒼夏の頃
└第6話
━━━━━━━━★☆
フゥッと、携帯の電話口の向こうから、微かな音が聞こえた。すみれちゃんがローソクを吹き消したらしい。
「ハッピーバースディ…」
私がゆっくり歌いだすと、全員が私にそろえるように歌いだす。
ただひとり、肝心の七尾を除いて…。
私は歌いながら、七尾をつついた。
「ハッピーバースディ ディアすみれ~…」
困惑した顔のまま七尾も歌いだし、その口に私は携帯のマイクを近づける。
「ハッピーバースディ トゥーユー」
歌い終わり、温かな拍手を、僅かでもマイクが拾ってくれることを祈りかけたころ、携帯から「あっ!」という、すみれちゃんの甲高い声が聞こえた。
一瞬、全員が緊張する。が、すぐにその緊張は解けた。
「お母さんが帰ってきた!」
ぱっと明るいすみれちゃんの声。「お母さんが帰ってきたみたい」とみんなに伝えると、一同ほっとした表情を浮かべる。
「…もう、大丈夫だな?」
七尾は『お兄ちゃん』らしい落ち着いた声で電話の向こうのすみれちゃんにきいた。
返事までは聞こえなかったが、多分「大丈夫」だったのだろう。
二言三言喋った後、七尾は電話を切った。
一瞬、七尾が私の方へ「やれやれ」とも「ありがとう」ともつかぬ表情を向けた。
少しだけ、胸がきゅっとする。
「みなさん。ありがとうございました」
七尾は周囲を見渡して明るく礼を言った。
そして私に改めて向き直って、「ありがとうございました」と言った。
ああ、私って、七尾から見たらセンパイなんだな、と、少し残念に思った。
月森の機転には正直言って驚いた。俺なんかじゃ、到底思いつかないことだ。
春川が早くも「さすがですね」と言って月森に話し掛けている。
この2人が話し始めると長い。当分は口を挟む隙はないだろう。
手元の携帯がまた光った。今度はメールだ。
「お兄ちゃん、さっきはありがとう(^▽^)
ひかりちゃんにも、ありがとうって伝えておいてね。」
すみれにしては短いメールだったが、俺は改めてほっとした。
ちらりと月森の方を見る。
まぁ…後でいいか。
しかしどうして、すみれと月森はこんなにも仲がいいのだろう。
いつだったか、すみれが何か言っていたな…。
だが、どんなに記憶を辿っても思い出せなかった。
「七尾っ!早くこっち来いよ」
黒木部長の、怒りを含んだ声がして、俺は飛び上がった。
「あ、は…はい」
慌てて部長と岡野先輩のいるテーブルに行く。
何だったかな…すみれと月森の関係…。
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虹色プリズム☆第5話
[第一章「蒼夏の頃」] Posted Date:2008/07/28(Mon) 00:00
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◆虹色プリズム
├第一章 蒼夏の頃
└第5話
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パクっ!
満面の笑みで黒木が言う。
「もうすぐ完成だな。みんなに準備するように言っておくぞ」
準備も整い、みんなで夕食を食べる。
「いただきまーす!」
他愛も無い話や明日からの事などに華を咲かせている。
1時間ほど経っただろうか…?
俺の携帯が光っている。
「誰だろう?」携帯のディスプレイには妹のすみれの文字が
「もしもし?」
「お兄ちゃん~」
いつもと違った、すみれの声を聞いて驚いた。
「どうした?」
「停電してるぅ…」
「なんで?ブレーカーは見た?」
「暗くてわかんないぃ~」
「母さんは?」
「電話したら、もうすぐ家に着くって言ってた…今ロウソクつけたぁ…」
「せっかくの誕生日に停電なんて最悪だよ…お兄ちゃんもいないし」
「帰ったら祝ってあげるって約束しただろ?」
「そうだけどさぁ…」
黒木部長が心配したのか事情を聞いてくる。
その話をさっきまで騒いでた全員が静かに聞いている。
「母さんもうすぐ帰ってくるんでしょ?だからちょっと我慢…」
そう話そうとした時、携帯電話を取られた。
月森ひかりだ。
「すみれちゃん大丈夫?」
「あ、ひかりちゃん!なんとか大丈夫だよ~」
「暗いの怖い?」
「ううん。大丈夫だよ。」
「じゃあ早くローソク消して?」
「えっ?」
その会話を聞いてた全員が困惑していた。
「ローソク消して!みんなすみれちゃん待ちだよ」
一瞬時が止まった。
どこかでひぐらしが鳴いている。
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虹色プリズム☆第4話
[第一章「蒼夏の頃」] Posted Date:2008/07/24(Thu) 00:00
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◆虹色プリズム
├第一章 蒼夏の頃
└第4話
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「ま、とにかく無事に着いたことだし、めでたいということでビールで乾杯!ってやりたいとこなんだが、コホン、高校生という自覚を持ってだなあ、晩飯の支度にかかろうか」
黒木は部長らしく夕食の支度をするようにみんなに命じたが、どうも本人はその気ではないらしい。なにやら機材を探しているようだ。
「部長、そんなとこでごそごそやってないで、食糧を運ぶのぐらい手伝ってくれなくちゃ」
まだ1年生の春川は、部長の怠慢に文句を言った。
「ええ、俺にそんなことをやれってか」
「そうですよ、みんなでやるからこその合宿でしょ」
「しかし」
春川は食糧の入った段ボール箱を黒木部長に押し付けようとするが、黒木はいきなりその春川にカメラを向けた。
「な、なんですか、いったい」
カメラを向けられて驚く春川の前に月森が飛び込んだ。
「じゃーん、いよいよ、ロケハン、その夕食の準備でーす、いったい今夜はなにができるのかしら、それとも食べることができるのでしょうか」
春川はきょとんとしていた。
「何にも知らないでごじゃるか、うちのはなあ、メーキングの方が面白いって評判なんだ。もしかしたら今回はこっちを出品…」
七尾は始めて参加する春川に、黒木がメーキングビデオを造っていることを教えた。
「ちょっと待ってよ、それじゃあ私の脚本が下手だということなの」
「そんなことは言ってはないでごじゃるよ。でも脚本担当のおまえが真っ先にこうなんだから…」
「あら、そこ、そこ、そこよおお、ね、わかるでしょ、私はヒロインでもあるわけだしい」
黒木は呆れて、夕食準備の方へと足を向けた。
山荘の裏手にある深い森の中では、ふくろうが鳴いていた。ほおおお……
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虹色プリズム☆第3話
[第一章「蒼夏の頃」] Posted Date:2008/07/21(Mon) 00:00
◆虹色プリズム
├第一章 蒼夏の頃
└第3話
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駅前。
夏のロケ合宿に参加する緑ヶ丘高校映研部の部員6人は、部長の黒木のハイエースに乗り込んだ。
「部長、運転大丈夫ですかあ?」
翠が後部座席から冗談とも本気ともつかない顔で運転席の黒木を覗き込む。
「まかせなさい。実は免許を取る前から親父の車をけっこう乗り回していたのだよ」
この春、18歳の誕生日を迎えると同時に車の免許を取った黒木。
父親の仕事用の白い8人乗りハイエース。
もちろん車の前後には若葉マークのマグネットシールをつけてある。
「おいおいおい・・それは洒落になんないよっ」
黒木と同じ3年の岡野。映研副部長。助手席でわざとらしくリアクションをとる。
黒木と岡野は幼稚園からの幼馴染で、なにかと常に行動を共にしており、
そんなことを知らないはずがない。
「でも本当に安全運転でお願いしますよ、部長~」
いい加減な眠た声で蒼也。
「七尾おぉ、ロケというものは時間との勝負なんだよ。お前の寝坊のせいで1時間押しだ」
遅れた1時間を取り戻すために目的地までとにかく飛ばしたい、とでも言いたそうな黒木の口調。
「黒木君」
「……!」
「だめよ。ゆっ、く、り、安、全、第、一、にっ」
「分かってるよ、月森…」
ひかりが見事に釘を刺した。コンマ何秒か停滞する車内の空気。
黒木部長は月森ひかりに惚れている。
黒木以外の5人にはバレバレである。
30分ほどで高速道路に入る。
「降ってきたんですけど」
今回のロケ参加者で唯一の1年生、春川萌がポッキーを食べながら窓の外を見てつぶやく。
「通り雨だよ。前方はもう晴れてるよ」
助手席の岡野。
「見て!」
「虹だ…」
前方に出来た綺麗な虹のアーチをくぐりぬけるように6人を乗せたハイエースは目的地へ進む。
パーキングでの休憩を挟みつつ、4時間あまり高速道を走ってから目的地最寄のインターチェンジを降りる。
合宿中に消費する食料などを地元のスーパーで買い込んだ。
3桁国道をしばらく進み、さらにウネウネとした山道を登ること小一時間、
ロケハン一行は目的地の山荘へ到着した。
外観は山荘というよりも「古びた白い洋館」とでも形容するのが一番しっくりとくるその建物は、
夕刻の薄闇の中、6人を静かに迎えた。
どこかで、ひぐらしが鳴いている。
虹色プリズム☆第2話
[第一章「蒼夏の頃」] Posted Date:2008/07/17(Thu) 00:00
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皆さんこんにちは☆
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毎週月・木曜日にお届けします☆
◆虹色プリズム
├第一章 蒼夏の頃
└第2話
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うわ、あいつ、またぼーっとしてるよ。黒木に怒られちゃうぞ。
「コラー、七尾!ちゃんと話きいてるかっ!?」ほら、怒られた…。
黒木の大きな声が部屋中に響き渡る。映研には珍しくなぜか体育会系の男。しかも部長。
「は、はぁ…」と七尾。
「今日は明日のロケハンの打ち合わせしてるんだぞ!ちゃんと聞いておけよ!!」
「は、はぁ…」と相変わらず間の抜けた返答。
黒木は諦めというか、やれやれ…っといった感じだ。
『クスクス。クスクス。』
いつも通りの黒木と七尾のやり取りに他の部員達は声を立てて笑っている。
映研はいつもこんな感じだ。私も笑いを堪えるのに精一杯。
でも、今日は七尾の雰囲気になんだか違和感を覚えた。
「まぁ、いい。とにかく皆もちゃんときいてくれ!」
黒木は明日の話を続けた…
・
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・
私は月森ひかり。高校3年生。

映画研究会に所属。主に脚本を担当している。
世間では夏休みたが、冬のコンクールに応募する映像制作の為、受験勉強の合間を縫って奔走中。
☆ ☆ ☆
やっと会えるね。
遠くで少女の声が聞こえた。
光で顔は見えない。
虹色に反射する光は、手で覆っても眩しくて。
ずっと…ずっと待ってるからね…
その声は懇願するような…なんだか切なさを感じた…
☆ ☆ ☆
「お兄ちゃ~ん、早く起きて」という声。すみれだ。
「うー…ワタクシ、まだ眠いでござる…」
「お兄ちゃんの携帯鳴ってるよ。今日は映研の人達と約束あったんじゃないの?」
すみれの声の近くで携帯の着信音が鳴っている。
「やばっ!」携帯のディスプレイには黒木部長の文字が…
「も…」
「七尾!何やってるんだ!!もう待ち合わせの時間過ぎてるぞ!!!」
「すみません!寝坊しました。すぐ行きます。すみません。」
怒りを含んだデカイ声に俺は一瞬で眠気が吹っ飛んだ。この時俺は、夢の事なんか忘れて皆の待っている集合場所に急いだ…。
次回は、7月21日に公開します!
第1話はコチラです♪| «Prev |
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