聖学院大学提供│携帯小説「虹色プリズム」 2008/8
虹色プリズム☆第12・13話
[第一章「蒼夏の頃」] 投稿日時:2008/08/25(月) 00:00
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◆虹色プリズム
├第一章 蒼夏の頃
└第12・13話
※携帯小説『虹色プリズム』のHP掲載は、
毎週月曜日に変更になりました。
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「ふおっほっほっほ、いい塩梅に雷が落ちよる。のう、ひかり」
「そうですね、でもずいぶんと近かったような」
「ええ、この裏山の尾根伝いに鉄塔がありますから、そこへ落ちたんでしょうね」
ここは管理人の木戸の部屋、テーブルを4人が囲っていた。
「送電線なの、その鉄塔は?」
木ノ下 翼 は心配そうに、芦屋 武人に尋ねた。
「ああ、そうだけど、停電しなかったのは運が良かったかな」
「あら、私にすれば停電してくれた方が楽しかったのに、ねえ、木戸のおじいさま」
月森ひかりは、怪しげに笑った。
「ふおっほっほっほ、そうかもしれんなあ、じゃあ、停電させるかな?」
「もう、止めてください、まだ初日、深夜ですよ、ただでさえ遠路くたびれたところに、私が上げさせられた悲鳴ですっかりみんな参ってるみたいだし。今の雷だって相当驚いたはずですよ。私も一人だったら泣き出したかも」
木ノ下 翼はそう言ってみんなを睨んだ。
「でもね、私にとっては、これが最後の映画になるのよ。うーんとすごいものを創りたいの、それで木戸のおじいさまや、あなた方お2人にもお願いしたわけなんだから」
月森ひかりは3人に頭を下げた。
「ふおっほっほっほ、わしもこの年になっても、まだ楽しめるんじゃから、ありがたいことじゃて、ふおっほっほっほ」
「じゃあ、今夜はみんなを寝かさないようにしましょうか?どう、ひかりちゃん」
「ひかりさん、それでいいの?」
月森ひかりは左手の親指を噛んだ。考えるときの癖のようだ。
「できる?」
「ああ、今度は悲鳴なんかじゃないさ。もっと驚かせてやろうじゃないか」
芦谷武人は目を輝かせた。
+・+・+・+・+・+・
ガタン・・・
管理人以外誰もいない筈の1階で、小さな音がした。
当然、その小さな音に気付くものは誰もいなかった。
ギシ・・・ギシ・・・
微かに、何かを引きずるような音を伴いながら、それは階段をゆっくりと上ってくる。
若き合宿参加者達より少し背の高い影は、時々ため息をつき、ゆっくり階段を上る。
まだ誰も、気付いていない。
影は階段を上りきると、ひとつのドアノブに手を伸ばした。
☆ ☆ ☆ ☆
甲高い悲鳴が、小さなペンションに響き渡る。
それはまるで闇を切り裂く雷の音のようで、誰しも一瞬、悲鳴だとは思わなかった。
一瞬の戸惑いの後、真っ先に駆けつけたのは七尾だった。
「春川さんっ!?」
少し遅れて、岡野と黒木が部屋を飛び出してきた。
3人は、そこで意外な光景を目の当たりにする。
後に考えてみれば、ひかりたちが来たのが妙に遅かったことにも気付けたはずだが、
この時点での3人には、そんなことは、少しも気にならなかった。
虹色プリズム☆第10・11話
[第一章「蒼夏の頃」] 投稿日時:2008/08/18(月) 14:04
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◆虹色プリズム
├第一章 蒼夏の頃
└第10・11話
※携帯小説『虹色プリズム』のHP掲載は、
毎週月曜日に変更になりました。
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芦谷と翼さんの部屋の前で、部員達と集まってなにやら話をしている。
「みなさん、ご心配をお掛け致しました。もう大丈夫です。明日もお早い起床ですよね。ごゆっくりお休みください。それでは、お休みなさいませ。」
芦谷はにやにや笑いながら、そう言って早々と部屋の扉を閉める。
俺はこの芦谷という男が嫌いだ。言葉使いは丁寧だが、
いつもにやにや笑いながら話をしてて他人をバカにしてるとしか思えない。
慇懃無礼とはまさにこの事だ。どうして翼さんみたいなお金持ちのお嬢さんが一緒にいるんだろうか。
「何があったんだ?」
俺は状況が分からず、近くにいた月森に問いかけた。
「こっちのほうで悲鳴が聞こえたから見に来たんだけどね…」
月森もまた状況が分からない、といった感じで答える。
「なんか~、木之下さんの~寝てるとこに~、おっきな蜘蛛が~降ってきたらしいんですよ~。」
一番状況を把握してそうな春川がのんびり続けた。
なるほど!
寝てるとこに蜘蛛なんか降ってきたら、お嬢様育ちの翼さんはさすがに悲鳴あげるよな。
なんて可愛いんだ…守ってあげたい!いや、待て。俺には月森が…。
「ふ~ん。」
興味なさげに岡野がつぶやく。
「でも~、木ノ下さんは~出てこなかったんですよ~。それに~七尾さんと管理人さんも~。」
春川はさらに続ける。
ん?言われてみれば、七尾とじいさんがいない。まぁ、俺と一緒で気付かなかったんだろう。
しかし、翼さんも顔を出さなかったのか…。相当ショックだったのか…。
「とにかく、このままだと明日のロケハンに支障をきたすから、そろそろ各自部屋に戻って寝よう!」
岡野がそう締めくくると、みんなはそれぞれの部屋に戻っていった。まるで部長みたいだ…。まぁいい。
俺と岡野も部屋に戻って寝た。そして、また叩き起こされるとは知らずに…。
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「ふしゅっ、ふしゅっ、しっ、ふしっ、しっ・・」
隣の部屋から、さきほどの騒動で目が冴えて眠れなくなったのだろうか、声質から察するに、腕立てだか腹筋だか分からないが筋トレをしているであろう黒木部長の呼吸音が聞こえてくる。
「気持ち悪い・・」
聞きたくもないその荒い息使いを耳にした春川萌は、隣室と自分の部屋とを隔てている、そう厚くはないであろう壁に向かってつぶやいた。
春川萌は思う。
黒木部長は単純な体育会系筋肉バカだ。
「お前」なんかにひかりさんが振り向くものか。黒木の親友、副部長の岡野も然り。
いや、バカなりに自ら前に出る黒木と違って、あいつは提灯持ちキャラな分、いっそう鼻についてたちが悪い。
あの二人がいる限り、わたしの好きな「作品」とは全く真逆な方向の映画しか作らせてもらえない。
「早く卒業して引退しないかな・・アイツら。」
・・・!
思わず声に出してしまったことに気づいた萌は、意味もなく慌ててあたりを見回した。
自分でも極端な性格だと思う。
いつからかは分からないが、人目のある場所での自分と心の中の自分とに相当の開きができていた。小学校に上がる頃にはもうこんな感じだったように思う。
まあいいや。
天然にしろ二面性にしろ変なキャラであることは一緒。それに天然の自分も別に演じているわけではない。
ちょっと人より好き嫌いが激しい感じ・・?みたいなもの・・?人間って誰だってこんなものじゃない?
それにしても本当に黒木と岡野には早くどこかに消えて欲しい。
そうすれば、映研は七尾先輩と翠さん、そしてわたしの三つ巴の体制で新しく生まれ変わるのだ。
七尾と翠はあのバカでスットコドッコイなコンビとは比べ物にならないくらいセンスも良いし「使える」。
わたしはあの二人にならついていってもいい・・。
そして、こんな子供じみたホラー・サスペンスもどき路線の脚本はゴミ箱へ捨てて、とびっきりの「恋愛青春映画」を作るのだ!
その時、かつて耳にしたことのないような大音量の雷鳴が萌の妄想モードを停止させた。
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虹色プリズム☆第8・9話
[第一章「蒼夏の頃」] 投稿日時:2008/08/11(月) 08:00
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◆虹色プリズム
├第一章 蒼夏の頃
└第8・9話
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地下道を戻りながら、私・・・月森ひかりは七尾に尋ねた。
「あんた、管理人さんと知り合いなの?」
「いや・・・」
相変わらずはっきりしない態度で首をひねっている。
「七尾の名前知ってたんだぞ?しかも脚本だなんて・・・なんでそんなこと知ってるんだ?」
部長は何か不機嫌みたい。
「そういわれても・・・どうしてなんでしょう?」
七尾は助けを求めるように芦谷さんのほうを見た。
「さあ・・・僕は映画研究会という団体名と代表者名しか聞いてませんが」
芦谷さんはにやにや笑うばかりだ。
「あれ、水の音?」
萌が話の流れを断ち切った。
たしかに・・・さっきは気づかなかったけど。
「雨が降り出したかな。天気予報で、明日は降ると言ってましたからね・・・」
芦谷さんが言う。え?
「たしか朝の予報じゃ晴れるって・・・」
私の疑問に。
「山の天気は変わりやすいですからね・・・それに、台風も来るらしいですよ」
翼さんが答えた。
ほとんどが天候に左右されないシーンだから、構わないといえばそうなんだけど・・・
やっと山荘に戻ったときには、みんな口数が少なくなっていた。
黒木部長は元気そうだが、女性陣はけっこう疲れているようだ。
俺たちの部屋は2階にあり、2人部屋と1人部屋があった。
俺とひかりの部屋は1人部屋だったが、俺の部屋は階段に一番近くひかりの部屋が一番遠かった。
TVもないし、明日は早い。
木戸の言ってたことは気になるが・・・明日になればわかるだろう。
寝坊して怒られないよう目覚ましをかけて、風呂に入っって早く寝よう。
川岸を走る小さな女の子。
近くなったり遠くなったり・・・追いかけているのだが、捕まえられない。
・・・小さい頃のすみれ?
「お兄ちゃん・・・」
女の悲鳴。
眠りを覚まされた俺は飛び起きた。
夢・・・じゃない?
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テレビの明かりだけの薄暗い部屋でロッキングチェアと人影がゆらりゆらりと揺れている。
画面から流れる映像は川岸を走る小さな女の子が近くなったり遠くなったりしている。
撮影者が追いかけているのか、なかなか捕まえられない。
ロッキングチェアに座る人影はまるで死神を想像させるかの様にフードを目深にかぶり、
その雰囲気からは老齢に達しているのが一目でわかる。
そして、一点を凝視し何度も何度も同じ事を呟いている。
「すみれ・・・」
☆ ☆ ☆
『バシッ、バシッ』岡野が黒木の頬をしきりに叩いている。
「黒木、起きろ!おい、黒木!!」
「・・・」
「・・・。黒木、筋トレの時間だぞ!」
「ん?もう筋トレの時間かっ??」
そう言って俺は腕立てをやり始めようとする。
いや、正確には【もうやっている】。
「おい、そんなことしてる場合じゃないんだ!今悲鳴が聞こえた。見に行こう!」
岡野が息もつかずに一気にまくし立てる。
「29、30、33…んっ!?悲鳴??」
俺は驚きのあまり回数を数え間違えた…。
悲鳴なんか俺は聞いていないが、岡野がそんなつまらない嘘をつくとも思えない。
岡野に言われるまま付いて行った。その時、時計の針は午前2時45分を指していた。
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虹色プリズム☆第7話
[第一章「蒼夏の頃」] 投稿日時:2008/08/04(月) 00:00
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◆虹色プリズム
├第一章 蒼夏の頃
└第7話
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…すみれと月森の関係…。
今更ながら、自分でも不思議だと思う。
あれは確か…ズキッ!
ふと頭が痛みが走る。
☆ ☆ ☆
ずっと…ずっと待ってるからね…
絶対にまた会おうね…○○○○○で約束…
☆ ☆ ☆
夕食を終え、みんなで遊戯室へ移動することに~♪
「それにしても、ここの山荘はえらく山奥に建っているんですねぇ」
何気に翼がいった。
木ノ下 翼…この山荘の管理人の孫である、芦谷 武人の恋人らしいが、正直何を考えているのか分らない。
わざわざ、夏休みなのに恋人のバイトを手伝いに来たのか?
外見からは良いところのお嬢さんっぽい感じがする。
俺は人付き合いは良いほうではないが、この女には何かあると俺の勘が告げている…
更にいえば、山荘管理人の木戸 雅美は高齢の為、足が悪いらしいが、どうしてこんなに山奥まで来る必要がある?
孫が来ているのだから、全部任せておけばいいじゃないか。
…あー、まずいないつもの事ながら自分の悪い癖が出始めている。
俺は頭を振って今の事を忘れようとする。
「どしたの?」
ふと、翠が傍にきて聞いてくる。
「いや、ちょっとね」
俺は適当にごまかした。
俺は、話題を変えるため「遊戯室って何処にあるんですか?」 と芦谷 武人に聞く。
食堂を出てからゆうに5分以上歩いている。
「すいませんね、遊戯室は別館にありますので、一度地下へ降りてからでないと行けないようになっているんですよ。」
にやけながら芦谷 武人が答えた。
別館?外から見た感じではどうみても1つの館にしか見えなかったが…
俺の脳裏に不安が見え隠れする。
地下へ降り、歩く事数分、目の前には鉄製の大きな扉が現れた。
「あれっ、向こう側の扉は木製だったのにこっちの扉は鉄製?」
翠が不思議そうな顔をしながら呟いた。
地上へ出てすぐ左手側に扉が見える。
「こちらが遊戯室となっております。」芦谷 武人がいう。
「やれやれ、やっと到着か」部長がため息混じりに答えた。
他の皆もどこか疲れた顔をしている。
確かに食堂からこの遊戯室までどのくらい歩いたのだろうか。
普段から鍛えているはずの部長まで、ちょっとお疲れ気味の様子だ。
「ゆうに1駅ぶんくらいは歩いていないか?」黒木部長が皆に聞こえるような大きな声で言った。
俺も一息つこうと思い、翠に声をかけようと辺りを見回すが何処にも見当たらない…
「みど…」翠を呼ぼうとした瞬間、部屋の中から男女の悲鳴が聞こえた…
とにかく反射的に叫び声のした方へ俺は駈け入った。
「遊技室」と言われる部屋の中には副部長の岡野と一年の萌が恐怖に顔をひきつらせて立っていた。
そして彼らの視線の先を追うと暗がりにぼーと異様な身なりの人影が見える。
さらによく見るとそれは腰の曲がった白髪の老人が杖をついた姿であることがわかった。
部屋は板張りで何もなくかなり広い。
管理人の木戸である。
「それにしても、なぜ木戸がここにいるのだろうか。我々は地下の一本道を通ってここに出た。そして誰にも追い越されなかったし、先ほどまで食堂で一緒だった足の悪い木戸が先回りしてここにいるなど、映画じゃあるまいし、瞬間移動か…。」
「まてよ、地上からここに来る道があるに違いない。車で来たに違いない。」
「それにしても、なぜ、芦谷は我々をわざわざ地下の道を案内したのだろう。まさか、ここの場所を隠すため?」
悪い癖で頭の中で自問自答を始めている。
その時
「びっくりするじゃない。だいたい暗くてじめじめした地下道なんて趣味悪いよ。横溝正史じゃないんだから。それにおじいさん、その格好は変よ。」
萌が声をあげた。まったく、この場面で思ったことをそのまま口にできる萌はすごい。
「いやいやごめんなさいねえ、お嬢さん。映画研究会と聞いて、少し趣向をこらしてみたくなってね。」
木戸が応えた。
「遊技室というから卓球台とかビリヤード台がおいてあるのかと思いましたよ。」
黒木がおどけて口を開いた。
嘘だ。
あの地下道を通りながらみんなが考えたことは「遊技室=お仕置き部屋」だったはずだ。少なくとも俺は、その時点から不気味なものを感じていたし、岡野と萌が、木戸の姿に悲鳴あげたのも、そういう気分になっていたからに違いない。
「はっはっは、卓球台?温泉宿じゃないんだから。よくドアの上をご覧なさい。」
いつのまにか木戸の傍らに立っている翼である。
あわててドアの外に出て、ドアの上にかかっている古びた名札をよくみると「お遊戯室」とある。
「お遊戯?」
全員が唖然とした。
不思議なものである。
「お遊戯」と知ったとたんに、不気味に思われた部屋も、昔遊んだ幼稚園のそれであることがわかったし、何だか気味の悪いと思っていた木戸も園長先生のようでもあるし、翼も幼稚園の先生に見えてきた。
見えなくなって心配していた翠もひかりさんと一緒にいる。
「今日はここまでにしておきましょう。君たちには明日とっておきのものをお見せすることにいたしましょう。七尾君、君がすーと昔に忘れたことをきっと思い出すよ。今回の君の脚本にも膨らみがでるといいね」
おお!名指しかよ。俺の脚本にまで口出しするのか。
でも、
そういえばこのロケハンの最初からずーと気になっていたこと、過去の記憶、なんだか、解けてきそうな気がしてきた。
「さあ、今日のところは部屋に帰って寝よう。みんなゆっくり休めよ。」
黒木が部長らしくその場をしめた。
よくみると黒木の手には小さなハンディカメラが握られている。
さすがメーキングビデオの撮影はしっかりとしていたわけである。
つづく。。。。
♪次回の更新は、8月11日になります♪
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